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■JBC競走とジャパンカップ - 今年は断然JBCに軍配

 11月4日金沢競馬場。初の北陸での開催となった地方競馬の祭典「JBC競走」は、当日の本場入場者数は1万2569名(15年ぶりの入場者1万人超え!)、総売り上げは24億9800万円と、昨年の金沢競馬の年間売上79億円の3割に迫る驚異的なレコードを記録し、大盛況のうちに無事終了した。
 私もJBC協会事務局の一員として、金沢競馬場でレースを観戦したが、お昼以降も続々入場するファンの群れや、飲食店ブースにできた長蛇の列を目の当たりにして、JBCを楽しみに集まった県内外の競馬ファンの熱気を肌で感じたのだった。
 昼過ぎに場内を一周りしながら、何人かのファンに直接お話を聞いてみた。年配ファンは、「普段の4倍の入りじゃないかな」と驚いていたし(実際普段の入りは3000人程度なので、彼の言うとおり、きっちり4倍の入場者があったことになる)、常設飲食店のなかで一番の長蛇の列を作っていた「たこ焼き屋」では、焼きそばとお好み焼きのセットメニューが500円で提供されていて、列に並んでいた人が「安くてボリュームがあってうまいんだよ」と自慢したように、地元ファンを中心にダントツの支持を集めていた。
 それにしても場内の雰囲気の良さは、今までのJBC競走のなかでは最高だったのではないだろうか。なにしろ、中央競馬から参戦してきたダートのトップホースと、それに対抗する地方競馬の優駿たちが激突するJpnI競走が、1日に3レースも連続で開催されるのだから。
 その熱戦を期待するファンが多数押しかけ、レースが終了したあとは、勝者を惜しみなく讃え、勝利ジョッキーは、ファンからサインと握手攻めにさらされていた。
 レースは既報のとおり、JBCレディスクラシックはメーデイア、スプリントはエスポワールシチー、クラシックはホッコータルマエと一番人気になった中央所属馬が優勝し、地方所属馬は5着、5着、4着と各レースとも1頭ずつ掲示板に載ったものの、中央と地方の力差を改めて実感することになった。
 当日、金沢競馬場には石川県知事や金沢市長をはじめ行政トップも勢ぞろいで、地元紙「北國新聞」は、JBC競走を1面とスポーツ面を大きく割いてカラーで伝えていた。谷本知事の「JBC競走を年に数回やれば、地方競馬がもっと活性化する」といった前向きながらも珍コメントまで載っており、主催者の端くれとしても、大変楽しく誇らしい限りだった。
 11月24日は、東京競馬場でジャパンカップが行われた。結果は既報のとおりだが、すでに33回を数えるこの国際招待競走も、出走外国馬のレベルもかつて程のものはなく、今年は日本の現役トップホースも勢ぞろいとまではいかなかったので、やや盛り上がりに欠けた感じがした。
 そんな中、東京競馬場でのちょっとした出来事を書き留めてみたい。ジャパンカップの前日、場内のホルモン屋スタンド前で、一人ホルモン焼きを頬張っている青年がいた。私も小腹が空いたので、豚角煮とビールを注文し、目の前の青年に少しおすそ分けをした。
 話をしてみると、彼は今日が2回目の競馬場観戦となる大学生で、前回バイトの先輩に連れてきてもらったら、大変楽しかったので、今日は一人でやって来たとのこと。
「明日は北海道の大学に通う友達が、ジャパンカップを見るために上京してくるんです」と彼は言う。「今朝北海道から来たんだ」という私の話をきっかけに、馬産地のことや私の仕事の種牡馬業務にまで話が膨らみ、彼は「スゴイですね」と大変興味を持って私の話を聞いてくれた。
 話してみると大変理知的な学生で頭が良い。大学を尋ねると、「慶応です」と答えが返ってきた。こちらはすっかり饒舌になって、「競馬が今後も大好きだったら、就職するなら馬産地は面白いよ。そうだ、社台グループの社長さんも息子さんも、君の大学の先輩のはずだ。競馬の仕事に就く気になったら、農水省や中央競馬会を就職先に選ぶんじゃなく、馬産地に来なさい!」と訴えると、さすがに彼は苦笑せざるを得なくなっていたが。
 自分も学生時代に競馬場通いを続けているうちに、気がついたら今の仕事に就いて、今日に至っている。若い子が週末に一人、競馬新聞とにらめっこして、バイト代で少し馬券を買うのも悪くないなと改めて思った。
 だからこそ、もっと競馬が盛り上がってほしい。世界有数の賞金を誇るジャパンカップがもっと充実していかないと、次世代のファン獲得につながらないような気がしてならないのだ。
 11月に行われた地方競馬と中央競馬の最高峰のレース、JCB競走とジャパンカップ。レースの盛り上がりは、今年は間違いなく地方に軍配が上がる。
遠藤 幹

※このコラムは、(社)日本競走馬協会の会報に掲載されている「日高便り」を、協会の許可を得て掲載したものです。