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■公正な市場運営で新記録達成 - セールの原点は厳格なリザーブ価格

 
7月8日、9日に開催された今年のセレクトセールも無事終了した。2日間で上場馬477頭のうち392頭が落札され、落札総額は117億6470万円(税抜き)となって、2日間開催の記録を更新。落札率は82・8%、平均価格も3001万円(税抜き)に達した。
 @最上級の良質馬を多数上場し(これが何といっても最重要)、A購買者の方々に楽しく快適なセール空間を提供し、B公正で透明なセール運営を行うこと、この3つのポイントをしっかり押さえ、今後も運営に関わって行きたいと思う。
 昨年暮れからの株高、円安の流れを受けて徐々に景気が上向きになり、セレクトセールにフォローの風が吹いていたのは事実だろう。今回の購買者登録数は460名(うち外国人14名)にのぼった。1歳市場が再開された2006年は購買者登録数286名(外国人3名)だったから、7年余りで参加するプレイヤーが大幅に増加していることがわかる。そのうち実際に購買した方は178名(外国人5名)と、2006年(122名・外国人0)と比べて50%近くも増えている。
 外国人バイヤーで今回話題を呼んだのは、カタール国王族のファハド・アル・ターニ氏だ。代理人デイビッド・レッドヴァース氏を通じて2日間で5頭(購買総額1億7400万円)を競り落とした。
 そのレッドヴァース氏が報道陣の共同インタビューに応じたときのコメントは、こちらがうれしくなるくらい、セレクトセールへの賞賛の言葉が並んだ。
「上場馬の質は、キーンランド・セプテンバーセールやタタソール・ノベンバーセールに匹敵、いやそれ以上の素晴らしい馬ばかりでした。本当は良い牝馬を狙っていたのですが、それは高くて買えなかった。こんなに運営のしっかりしたセールは世界中のどこにもないし、セール会場の美しさ、素晴らしいホスピタリティ、コンサイナーの馬見せの技術の高さなど、感動することばかりでした。2日目の当歳馬の一斉展示は素敵でほほえましい光景でした。一度に多数の馬を見ることができるのは大変有難いし、素晴らしいその風景を殿下と一緒に何枚も写真に撮りましたよ」
 今回、忘れていたことに改めて気付かされた――公正で透明なセール運営である。
今でもときおり日高の販売者から「リザーブ価格の途中で競り上げから下りることができないのか? 購買者に対して販売者側も最後まで競り上げに参加できるようにならないのか?」などと尋ねられることがある。
 HBAセールでは、リザーブ価格に到達しなくても販売者が了解すればその価格で売買が成立するし、海外セールでは販売者側がいつまでも競り上げに参加し、とんでもない価格で取引が成立するのを見たこともある。
 しかし、セレクトセールのリザーブ価格は、それらとは明らかに違う。リザーブ価格とは、販売者が責任をもって提示した最低販売価格であり、この金額に到達すれば自動的に売買が成立し(到達しなければ仮に1万円しか差がなくても主取り)、販売者はオーバーリザーブが許されない厳格な価格なのだ。だからこそ、購買者は安心してセレクトセールに参加できる。事前にお目当ての馬のリザーブ価格を確認しておけば、リザーブを超えた競り上げには販売者が絡んでくることはこのセールでは決してない。
 海外のセールのような不明朗さや生き馬の目を抜くようなマネー狂騒に巻き込まれることなく、セール会場内の購買者同士の「闘い」に集中するだけで良いのだ。
 レッドヴァース氏のセール運営に対する賞賛のひとつにおそらくこの要素も含まれていたのだろう。セール数日前にセレクトセール運営に深く関与している当協会理事からリザーブ価格に関する同趣旨のコメントを聞いて、つい忘れがちになっていたリザーブ価格にセリの原点を改めて確認した次第である。
 購買者が安心して参加できるシステム、これがセレクトセールなのだと改めて実感した。
遠藤 幹

※このコラムは、(社)日本競走馬協会の会報に掲載されている「日高便り」を、協会の許可を得て掲載したものです。