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■種牡馬戦線異状あり - この春、脇役種牡馬が大ブレイク

 本稿は桜花賞前に書いているが、この会報が出る頃には皐月賞の結果も出ていることになる。クラシック第一弾を目前に、春のクラシックの有力馬を見回してみると、種付料が割安な日高の種牡馬の産駒が目につく。
 産地では現在、種付シーズンの最盛期だ。クラシックレースの成績は種牡馬の人気に即、結びつく。有力馬の種牡馬関係者は、今年こそ千載一遇のチャンスと思っている方も多いだろう。果たしてその結果はいかに? 人気を背負うと思われるクラシック候補の父馬を眺めてみたい。
 まずは桜花賞。トライアルのフィリーズレビュー(GII)を制したメイショウマンボの父はスズカマンボだ。スズカマンボは天皇賞・春を勝ったサンデーサイレンスの後継種牡馬だが、道営競馬で活躍したイッシンドウタイや準オープンの金蹄Sを勝ったユーロビートなどダート路線で活躍する産駒が多い。そのなかにあって、芝路線で頭角を表したメイショウマンボは大変新鮮に映る。父スズカマンボの種付権利は、割安ながら例年になく活発に取り引きされていて、40頭程度まで落ち込んでいた種付数も今年はかなり復調しそうだ。
 フェアリーS(GIII)とトライアルのアネモネSを勝ってデビュー3連勝を果たしたクラウンロゼもまた、サンデー系の割安種牡馬ロサードの産駒である。今年17歳のロサードの初産駒は2007年にデビューしているから、種牡馬としては超遅咲きの部類になる。
 ロサード自身、2009年に6頭の牝馬に種付けしたのを最後に種牡馬としては開店休業状態(実際はアテ馬としてバリバリ活躍中!)。翌年に誕生した3頭のうちの1頭がこのクラウンロゼである。生産者のカミイスタットは、国道から新冠川沿いに遡ること約15キロ、四方を鬱蒼とした原生林に囲まれた河岸にある。ヒシアケボノ肌の母馬にロサードを配合して誕生したクラウンロゼに、雑草のようなたくましさを感じるのは私だけだろうか。
 もう1頭、残念ながら脚部不安で春は全休となってしまったが、デイリー杯クイーンC(GIII)を制したウキヨノカゼはオンファイア産駒だ。オンファイアはディープインパクト、ブラックタイドの全兄弟。血統面での魅力が大きいけれど種付料はこれまた割安で、種牡馬入りした当初はかなりの数の牝馬を集めていた。ウキヨノカゼのリタイアは残念だが、またターフに戻る日を楽しみに待ちたい。
 皐月賞に目を転じると、前哨戦のスプリングS(GII)を圧勝した昨年の2歳王者ロゴタイプがいる。父はシングスピールの代表種牡馬ローエングリン。現役時代、中山記念やマイラーズCを勝ち、フランスと香港のマイルGIでも2着、3着と好走した中距離の名馬だったが、スタッドイン以後は目立った産駒の出現がなく、種付数も昨年は30頭まで落ち込んでいた。
 ところがここに来て、ロゴタイプや共同通信杯(GIII)2着のゴットフリートの活躍もあって、種付権利の取引も余勢種付料(受胎条件50万円)の申し込みも一気に膨れ上がり、ロゴタイプのスプリングS優勝の直後に余勢は満口になった。スプリングSでのロゴタイプの圧勝は、当初囁かれていた距離不安説を吹き飛ばすのに十分であり、皐月賞では堂々の1番人気に推されることだろう。ゴットフリートも、トライアルの結果次第ではNHKマイルC(GI)の有力候補に急浮上しそうだ。
 そのほかでは、シニスターミニスター(父Old Trieste)の産駒も好調だ。今年に入り、沈丁花賞を勝ったインカンテーションや1000万下を勝ったダブルスターなど、ダート短距離路線で楽しみな産駒を送り出している。昨年までは種付権利の取引も低調だったが、ここに来ての産駒の活躍で取引も活発になりつつある。
 これら割安種付料の種牡馬産駒の活躍は、種付権利の取引においても、これまでとは異なるトレンドを生み出しつつある。例年あまり活発に取引されることのなかった30万円以下の種牡馬株が早い時期から取引され、すでに品薄状態なのだ。上記に挙げた種牡馬のほか、タイムパラドックスなどもよく取引されていて、逆に中堅級の50万円〜100万円前後の種牡馬株がだぶつき気味。
 いずれにせよ、割安種付料の種牡馬産駒の活躍が目立っているのが、一過性のものなのか否かは、春のクラシック競走の結果でおおかた見えてくるだろう。
遠藤 幹

※このコラムは、(社)日本競走馬協会の会報に掲載されている「日高便り」を、協会の許可を得て掲載したものです。