H24.8.24





■成功のカギは母系と営業 - 最上級市場で馬を売る方法

 セレクトセールが終了して1カ月が経過した。今春のトレーニングセールから感じていた軽種馬取引の復調傾向が、セレクトセールの結果で証明され、翌週開催ざれたHBAセレクションセールまで、産地にとって良い流れが続いている感じがする。
 一方でセレクトセールについて、一部の上場者、特に中小の牧場からは「大変ハードなセリで馬を売るのもしんどい」という声も聞こえてくる。果たして実態はどうだったのだろうか。
 社台グループと繁殖繋養数30頭以上の日高の大手牧場を除いた上場者の売買実績を調べ、セレクションセールの実績を加えて作成したのが下記の表だ。
 どうだろうか。中小牧場の売買実績も悪くないというのが私の率直な感想だ。確かに社台グループや日高の大手牧場と比べると分が悪いものの、1歳馬の売却率が60%以上で平均価格1700万円台という数字は特筆ものだし、当歳馬に至っては平均価格が2500万円を超えているのだ(1億円を超えた最高価格馬を除いても2156万円になる)。先物買いが手控えられる傾向の現状にあって、当歳上場馬の半分以上が売却されたのだから、上出来の部類だろう。それなのになぜ、一部の上場者にとって「ハードなセリ」という印象を与えるのか。
 セレクトセールやセレクションセールといった最上級市場で馬を販売するためには、押さえておかねばならない重要なポイントが2つあると思う。このポイントを外した場合、主取りになる公算が高く、上場者は大きな徒労感を味わうことになる。あくまで私見だが、セレクトセールに上場するうえで欠かせないポイントを指摘しておきたい。

■母系のしっかりした馬を!
 1つ目は母系、つまりブラックタイプのしっかりした馬を上場すること。父馬や性別にとらわれ、母系を考慮しない上場者が多い感じがする。当歳馬を購入する場合は、購買者にはブラックタイプしか判断材料がなく、ここで買わないと買いそびれてしまうと思わせるような馬でないと販売は厳しい。良血かつ競走成績の良い繁殖牝馬の導入は資金力を必要とするが、生産馬販売の最重要項目はブラックタイプだということを肝に銘じてほしい。当歳で売れた馬の多くが良血馬なのは、購買者からすれば当たり前のことだ。

■セリ前の営業が大事!

 2つ目のポイントは、セリ会場を「庭先取引」の場にしてしまうことだ。セリ開催日までに購買可能な顧客に上場馬の積極的な売り込みを図り、上場馬に十分に興味と関心を持っていただいたうえで、セリ当日に売買契約を締結する形に持ち込めるようにしたい。事前の営業もなく当日だけ購買者にお見せしたところで、それはただの陳列に終わってしまう可能性が高い。購買された馬主にしっかりお礼を述べ、今後につながるような事後のフォローも重要だ。コンサイナー頼みではない、自発的な営業が実を結ぶと信じたい。
 セリ市に馬を持って行ったら、たまたま高く売れたといった古き良き時代は二度と来ないし、レポジトリー検査料、コンサイナーへの預託料など、かつてはなかった支出がセリ取引で発生する時代にあって、セリで販売するためのハードルは高くなっているかもしれない。しかし、ポイントを外さずに確かな戦略を持って上場馬を確実に売りさばく牧場も数多く、そういった馬たちが競馬で好成績を挙げ、購買されたオーナーに楽しんでいただけているのも事実だ。
 日高で仕事をする者として、1頭でも多くの上場馬が売却され、それらの馬が競馬で良績を残し、関係者みんながハッピーになることを心から願っている。

■7月セリにおける中小規模牧場の販売成績

市場
上場数
売却数
売却率
平均価格(円)
セレクトセール当歳
63
34
54.0%
25,410,000
セレクトセール1歳
54
33
61.1%
17,640,000
セレクションセール1歳
167
99
59.3%
12,100,000
*各市場の成績から、社台グループ、繁殖牝馬繋養30頭以上の牧場、馬主による上場馬のデータを省いて集計した。
遠藤 幹

※このコラムは、(社)日本競走馬協会の会報に掲載されている「日高便り」を、協会の許可を得て掲載したものです。