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■ステイゴールド大躍進 - ダービーもこの20年で様変わり

 ステイゴールドは私が勤務する会社の事務局種牡馬である。今年の3歳クラシック戦線では、ステイゴールド産駒のオルフェーヴルが、皐月賞と日本ダービーを制して二冠に輝いた。ほかにも牡馬ではナカヤマナイトが共同通信杯、フェイトフルウォーが京成杯でそれぞれ優勝し、牝馬ではバウンシーチューンがフローラSに優勝するなど、現3歳世代はステイゴールドの大当たりの年となった。
 これら産駒の大活躍は、ステイゴールドの種付数の大幅増加にストレートに結び付いた。今年の種付数は自己記録の177頭を超えて200の大台を大きく超える見込みだ。父サンデーサイレンス同様、どんな種付も果敢にこなす気性の強さと受精能力の高さが成せる種付数であり、ステイゴールドの頑張りには本当に頭が下がる。
 ステイゴールドが種牡馬入りした当初は、小柄な馬体で奥手の中長距離馬のイメージが強く、人気のサンデー系種牡馬とはいえ、種付料も受胎条件で150万円と、中堅級種牡馬の評価だった。事実、初期の産駒はそういったイメージに近い馬が多かったのだが、代を重ねるごとに2歳戦から活躍する産駒(ドリームジャーニー:朝日杯フューチュリティS優勝)や、ダートを得意とする産駒(シルクメビウス:東海S優勝)も輩出した。
 そして本年は3歳春のクラシックを制する産駒がついに出現し、年齢、距離、馬場を問わないオールマイティ種牡馬として、サイアーランキングの3位に躍進するなど種牡馬成績が急上昇している。 ステイゴールドのすらりとした体のラインは種牡馬というより、現役競走馬に近いものを感じさせ、17歳になった今もまだまだ若い。生産者の白老ファームのスタッフの方に尋ねた際は、「ブルードメアサイアーのディクタスが馬体にも気性にも出ているね」と感想を述べていた。ステイゴールドを経てディクタスを見ると、その代表産駒となったサツカーボーイは母ゴールデンサッシュの全兄ということに改めて気付き、サラブレッドの血統の奥深さを再認識させられることになった。

■21年ぶりのダービー観戦

 21年ぶりに東京競馬場でダービーを観戦した。仕事柄、種付シーズンは現場を離れられず、種馬場でレースを見ることもたびたびであったが、今回はダービー出走牧場の方のお誘いで、久しぶりの府中観戦となった。
 
前回の平成2年は、私の会社で産地の方を対象にしたダービーツアーを催行したのだが、その年の優勝馬はアイネスフウジン。中野コールが競馬場に大歓声となって響き渡った。それもそのはずで、観衆は19万6571人、発売総額も567億8692万円と、いまだ破られないダービーレコードの年だったのだ。残念ながらダービーツアーは、産地が種付・出産の繁忙期で参加人員が少なかったため一度きりで終わったのだが、逃げるアイネスフウジンを大外から豪快に追い込むメジロライアンの直線の攻防は今でも鮮明に記憶に残っている。
 あれから21年、日本経済が低迷するなか、震災の影響の残る雨の府中は、観客の出足も大きく削いでしまっていた。観衆8万2240人、発売総額198億3450万円と、21年前との落差にはため息が漏れる。震災の自粛ムードのなかで過剰な演出をやや抑えたせいもあるのだろうが、何やらダービーの盛り上がりには程遠い場内の雰囲気のように私は感じた。
 ダービー出走馬のうち日高生産馬は、平成2年は出走22頭中16頭を占めていたのだが、今年は18頭中5頭のみ。こちらも大きく減少した。アイネスフウジンの生産者も今は牧場を手放しており、この20年余りで競馬場をめぐる風景も大きく変わっている。
 帰りの京王線もかつてのすし詰め状態ではなくやや空いていたが、車内の若者グループが競馬談義で盛り上がっていた。仲間で競馬場に行った昔を思い出し、楽しげな談笑に自分の遠い昔を思い出した。競馬の魅力はまだまだ失われていない。やり方次第では必ず昔日の盛り上がりを取り戻せるはずだと彼らの楽しそうな表情を見て思った。

遠藤 幹

※このコラムは、(社)日本競走馬協会の会報に掲載されている「日高便り」を、協会の許可を得て掲載したものです。