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■牧場訪問記 - セリ上場への意欲と要望
  
 
 3月下旬、私は競走馬協会の職員の方とともに胆振日高の牧場を訪問して、今年のセレクトセールへの上場をお願いして回った。吹く風は冷たく、遠くに見える日高山脈は白一色ではあったが、牧場の放牧地は雪もほぼ消え去って、柳の芽も大きく膨らんでいた。日高にも春の訪れが感じられるようになった。
 今年のセレクトセールの開催日程が3日間から2日間に短縮されたことで当歳の上場頭数が減って、代わりに1歳馬の上場頭数が50頭増えて200頭に拡大したことなどを説明して当セールへの上場をお願いしてきたが、牧場の皆さんから貴重な意見を数多く頂戴して大変有意義な訪問となった。

 今、セリ市場で存在感を大きく増しているのが、コンサイナーだ。セリ上場までの数カ月の間、生産者から預かった馬をセリ用に仕上げ、併せて販売促進のためにさまざまなアイデアを考え、セリでの売却を目指す。
 そんなコンサイナーの皆さんから、非常にポジティブな意見をたくさんうかがった。
「競走馬協会のセリは、コンサイナーへの理解が深く、私たちも大変仕事がしやすい環境にあります。今年はさらにセレクトセールへの上場比重を高め、申し込みを増やしていきたい」
「1歳馬についても、全頭一斉展示が行われると他の馬との比較も簡単で、私たちにとっては大変ありがたいのですが」と、馬の仕上げに自信があるコンサイナーらしい意見もあった。
「どの市場に上場するかは、基本的には預託主の方にご判断いただくのですが、最近は助言を求められることも多くなっています。完全にコンサイナー任せの方もときどきいらっしゃいますが、馬の評価や各市場の特性を説明し、最終的な決定はお客様にお願いしています」
 市場取引の比重が増すにつれて、コンサルタント的な仕事も増えているようだ。

 セレクトセールに対して寄せられた代表的な要望としては、「セリ進行中にリザーブ価格の変更ができるようにしてほしい。セリ上げの状況を上場者が判断し、リザーブ価格に達する前でも購買者が落札できるようになりませんか」というものだった。
 セリの流れを重視した現状の方法では難しく、そのためにもリザーブ価格の設定を熟慮してもらい、なおかつセリ直前までリザーブ価格の変更を受け付けているのだが、リザーブ価格ギリギリでの落札が多い日高の牧場ならではの要望ともいえる。
 これは日高軽種馬農協のセリ市場への要望ともいえるが、日数の多いセリの場合、海外のように価格帯でカタログを分冊し、来場者の便を図って購買者の予算に応じた市場運営をすべきではないかとの意見も複数あった。

 ある牧場では、現状ではセレクトセールへの上場予定はないことを複数の理由を上げて論理的に説明された。要約すれば、「当場はオーナーブリーダーでもあり、良質馬は自分で走らせるのが基本です。セリに出すのは自家用から見切りをつけた馬なので、セレクトセール上場馬のなかでは上位レベルには達しておらず、相対的に低価格帯の馬が上場される軽種馬農協のセールのほうが販売しやすいのです。そういった理由で、当場はそちらの市場への上場をターゲットにしています」とのことであった。
 この牧場に限らず、上場予定馬の血統や馬体、各セリ市場の特徴をつかんで上場するセールを決定している牧場は多い。当然そういった研究やセリ市場の選定がセリにおける販売成績とも連動してくるのだろう。先に述べたコンサイナー任せの上場者は、この点でもっとセリ市場について考えるべきだろう。
 セレクトセール主取馬や欠場馬が、すぐあとに開催される軽種馬農協のサマーセールに上場できないことに関しては、「組合員でもある生産者にすれば、馬を売る機会は多いほうが良いので、経済的に大変な産地や牧場のためにも、軽種馬農協はそういった制限を撤廃すべきだ」という声が圧倒的だった。

 こちらの説明とセリに賭ける牧場の皆さんの意見が熱く交錯し、2日間の日程ではあまり多くの牧場を訪れることはできなかったものの、大変中身の濃い訪問となった。セレクトセールへの上場数を増やしていくためにも、今後も継続して生産者の意見を取り入れていく必要性を大いに感じた次第だ。

遠藤 幹

※このコラムは、(社)日本競走馬協会の会報に掲載されている「日高便り」を、協会の許可を得て掲載したものです。