H21.6.30





■門別ナイター ついに開幕 − 家族連れで賑わう馬産地競馬
  
 道営・ホッカイドウ競馬の命運を賭けた新生・門別競馬場のナイター競馬がついに開幕した。
 ご存じのように、 ホッカイドウ競馬は本年より業務運営の主体が北海道軽種馬振興公社に代わり、 本場も馬産地の門別競馬場となった。 新競馬法で措置された 「競馬活性化事業」 を活用して新スタンドとナイター照明設備を12億円余りかけて整備し、 ゴールデンウィーク期の札幌開催を除いて全82日間中76日 (5月20日〜11月19日) を門別競馬場で施行し、 全開催が 「グランシャリオナイター」 と銘打ったナイター競馬となった。

 門別競馬場は、 私の勤務先から車で5分余り。 ナイター初日にさっそく競馬場へ行ってみた。
 従来の門別競馬場は、 駐車場からスタンドまでは直線距離で400メートルほどあってアクセスの悪さが不評を買っていたが、 この日に合わせて180台収容の新駐車場がスタンドの隣に完成した。 種牡馬所有者で組織されたジャパンブリーダーズカップ協会 (JBC協会) が費用を負担し、 厩舎1棟を取り壊して跡地に駐車場を開設したのだ。
「JBC駐車場」 とネーミングされた新駐車場はファンにいち早く認知され、 重賞競走の日などは真っ先に満車となってしまって、 競馬場到着が遅れると利用できないほどの盛況ぶりだ。
「ふれあい広場」 とネーミングされた芝生のスペースでは、 地元農協や漁協の方々が野菜や魚の特産物を販売し、 鳥串やツブ貝焼きなどを振る舞っている。
 カクテル光線で照らされたパドックはやや小ぶりだが、 ファンと馬、 騎手との距離が近いので草競馬的な趣がある。 当日は、 交流競走騎乗のために参戦していた武豊騎手を、 手の届きそうな場所からカメラに収めるファンが数多く見受けられた。
 新スタンド 「ポラリス・ドーム」 は、 屋根の部分がテント構造の簡易スタンドと聞いていたが、 予想に反して大変立派なものだった。 内部には310インチ (縦3.8メートル×横7メートル) の大画面モニターが設置され、 パドックやレースの映像、 オッズなどを色鮮やかに映し出していた。 これは、 札幌の民間放送局の施設を取り壊す際に解体撤去される運命だったものを、 JBC協会が5000万円の費用を負担して新生・門別競馬場のために再利用した 「JBCビジョン」 で、 来場者は迫力溢れる大画面を存分に楽しめることになった。
 新スタンドには飲食物を提供する店も2店入った。 平取町の主婦有志が出店した 「ハナマル」 では町特産の黒毛和牛を使った牛丼やハンバーガーを提供していて、 なかなか美味しい。
 肝心の走路は、 薄暗かった旭川のナイター競馬とは一転して、 大井競馬場並みの照度が保たれて非常に明るい。 来場者も仕事帰りの人々やカップル、 家族連れなどが目立ち、 以前の昼間開催とはかなり趣が異なる。
 カクテル光線の下、 目の前を馬が疾走する光景を見れば、 やっぱり競馬はライヴが一番だなと思う。 外ラチ近くで観戦すれば、 騎手の掛け声、 疾走する馬の蹄音、 ステッキの音がはっきり聞こえて臨場感いっぱいだ。

 6月2日の北海優駿 (道営ダービー) の日は、 一家4人で競馬場に足を運んだが、 家族連れで来場している牧場関係者が目に付いた。 これまでは、 大半の牧場にとって競馬場は 「男社会の営業の場」 であって、 子供連れで来ることは皆無に等しかった。 それが地元のナイター競馬となれば、 奥さんや子供たちを連れて競馬場に来て、 生産馬を間近で応援できることになる。
 私の小1の娘もスタンドで同級生と出くわした。 生産馬がダービーに出走したFさんの娘だ。 お母さんは騎手がまたがった生産馬をカメラに収めてうれしそうだ。 私もFさんとしばし立ち話をし、 応援馬券を買った。
 数日後、 小学校の学級通信にFさんの娘の発表が載っていた。
「かようびに、 かぞくで、 けいばじょうへいきました。 たのしかったです」

 前号でも指摘したが、 道営競馬では門別競馬場本場の売り上げは全体の1割未満に過ぎず、 場内が混雑しようが空いていようが経営面では大きな影響はない。 しかし、 実際の競馬が面白くなければ、 多くを依存しているネット馬券や他の競馬場との相互発売の数字も伸びないはずだ。 バラエティに富んだ番組や充実した出走頭数、 そして本場の熱気や楽しさ――。 そういったものが複合した結果、 売り上げに結びついていくのだろう。
 門別競馬場には、 中央競馬にかなうものはほとんどないが、 中央競馬にないものをひとつ持っており、 それが大きなアドバンテージになるかもしれない。 それは日本でただひとつ、 「馬産地」 にある競馬場であること。 産地との密接な連携や産地資源を生かした競馬運営が大きな可能性を産みだすと信じたい。

遠藤 幹

※このコラムは、(社)日本競走馬協会の会報に掲載されている「日高便り」を、協会の許可を得て掲載したものです。