H20.1.12





■馬産地の平穏な年の瀬 −市場も新種牡馬の導入も活発化

  12月に入り馬産地も本格的な冬を迎えた。 しかし、 連日氷点下の寒さではあるものの晴天が続き、 雪はほとんどない状態。 このまま新春を迎えてほしいと思うのだが。 この穏やかな日々に歩調を合わせるように、 馬産地もここ最近ではわりと平穏な年の瀬を迎えている。

●好調だった市場取引
 少し前の話だが、 10月中旬に開催された日高軽種馬農協主催の 「オータムセール1歳」 は、 いつもの残り物セールというイメージが変わるぐらい、 活発な取引が展開したセールだった。
 上場馬は764頭 (昨年716頭・以下同じ) で、 売却333頭 (251頭)、 売却率は43.6% (35.1%)、 売却総額は11億8462万円 (8億3983万円) と、 大盛況でフィナーレを迎えた。 上場馬の質にはバラツキがあり、 高額取引馬と低額取引馬とに価格が二極化してしまったところも見られたが、 総体としては広く満遍なく売れたセールといえるだろう。 年末に向けて一息ついた生産者も多かったと思われる。
 日高軽種馬農協主催のセール全体でも、 年間トータルの上場馬は2571頭 (昨年2587頭・以下同じ) で、 売却頭数は1007頭 (929頭)、 売却率は39.2% (35.9%)、 売却総額は59億164万円 (57億3635万円) となって、 売却頭数、 売却率、 売却総額とも過去5年間で最高を記録した。
 当協会がセレクトセールを開設して以来、 従来の庭先取引から市場取引への流れが加速して、 市場取引の割合が大きく高まった。 その延長線上に今年の市場の良績があるともいえるが、 この結果にはひとまず安堵したい。

●新種牡馬を続々導入
 輸入種牡馬の導入が相次いだのもこの数年来なかったことだ。 大型種牡馬については、 社台グループ、 ダーレー、 日本軽種馬協会の導入事業がこのところ目立ち、 日高各町単位の種牡馬導入事業は散見される程度であったが、 今年は日高各町の種馬場および種牡馬商社を核とした外国種牡馬の従来型シンジケートによる導入が目に付いた。
 浦河ではスタチューオブリバティ (父ストームキャット、 英GIII勝ち馬、 種牡馬として供用済み)、萩伏ではフォーティナイナーズサン (父ディストーティドヒューマー、 米GI勝ち馬)、 静内はシニスターミニスター (父オールドトリエステ、 米GI勝ち馬)、 新冠はファスリエフ (父ヌレイエフ、 全欧2歳牡馬チャンピオン、 種牡馬として供用済み) といった面々が相次いで導入され、 1株あたり400万円〜900万円といった中程度の価格帯でシンジケートが結成された。 導入関係者の一人は、 「看板種牡馬の老齢化も進んでおり、 新種牡馬を導入して活性化を図らなければ、 さらに後れをとってしまう」 と話していて、 地域の種牡馬更新が進まないといった危機意識もうかがわれた。
 これらのほかにも新種牡馬の導入の報が相次いだ。 社台スタリオンにはダイワメジャーとローエングリンの導入が決まり、 ダーレーにはアドマイヤムーンとディクタットなど計4頭が新たにラインナップに加わる。 日本軽種馬協会にはケイムホームが導入される。 浦河ではさらにオレハマッテルゼとメイショウボーラー、 新冠ではサムライハートが種牡馬入りする。
 私の勤務先でも、 安田記念勝ち馬のアサクサデンエンと東京大賞典勝ち馬のスターキングマンの導入が決定した。
 久しぶりに新種牡馬の大量供用と相成ったわけで、 来春から熾烈な種牡馬競争が始まる。

●種付料の支払いも好転
 平穏な年の瀬を迎えている感じがする背景には、 私の仕事も関係している。 毎年、 年末は受胎条件の種付料の集金および精算の時期になるが、 昨年と比べると集金業務がかなり順調なのである。 私の感覚では、 例年より10〜15%ぐらいは回収率が上昇しているように思える。 前述したように馬の売れ行きが持ち直していることや、 この10年あまりの大不況のなかで頑張り抜いた生産者の方々が経営を続けていることが、 集金業務が順調な理由なのかもしれない。
 例年だと、 この時期に生産者の方々と種付料の算段について面談したり、 電話で話したりすると、 個々の事情がわかるだけに、 正直なところ気が滅入る場面も多かったのだが、 今年はそれも少なくなりそうだ。 いずれにしても、 馬産地においては長い冬が明けつつある、 といった趣があり、 季節は真冬に向かっていても、 春めいたこの雰囲気が続いてほしいと心から願う。

遠藤 幹

※このコラムは、(社)日本競走馬協会の会報に掲載されている「日高便り」を、協会の許可を得て掲載したものです。