H18.10.30





■驚愕のセプテンバーセール−最新の設備 激しいセリ

 このたび日本競走馬協会が主催した 「キーンランド・セプテンバーセール視察研修旅行」 に参加して、 短期間ではあったが、 キーンランドのセリの施設や運営方法などをつぶさに見学し、 さまざまな資料を収集してきた。
 私はレポジトリー担当スタッフとしてこの研修に参加したが、 本場のせりを間近に見、 セリを取り巻く空気に直に触れることによって、 さまざまな見聞を広めることができたように思う。
 このセールは世界最大の1歳市場だが、 日本でいう 「馬主経済=競馬の賞金や管理費用の生涯総計から馬の価格を考える」 といった思考パターンに慣れ親しんだ私にとっては、 大変な高額で1歳馬が取り引きされていく現実のセリには、 ただただ驚くばかりだった。 以下、 印象的だった点を取り上げてみたい。

●SHOW RING
 キーンランドでは2000年夏にせり会場の大規模な増築や改築が行われ、 収容厩舎の増設やレストランやバーの拡張、常設レポジトリーの設営などと併せ、 「SHOW RING」 (ショウリング) を開設した。 「SHOW RING」 とは、 長さ50メートル、 幅10メートルほどの巨大な屋根付きの下見所のことで、 馬を周回させるスペースが2箇所あって、1箇所に常時4頭の馬が周回して関係者が下見をしたり、 社交を展開したりする場になっている。
 「SHOW RING」 には随所にテレビモニターが設置されていて、 セリの実況や欠場馬の告知、 獣医師の情報などが次々に放映されるので、 ここで大方の情報も入手できる仕掛けになっている。 雨降りの際には威力を発揮する施設だが、 晴天時も大勢の人々で賑わっていて、 自然光のもと購買希望馬の最終チェックには最適の場所のようだ。

●鑑定システム
 セリ場の鑑定台に私たちも上がらせてもらって、 鑑定人から説明を聞きながら、 設備を見学した。 鑑定人が利用するモニターには、 裏セリの鑑定スタッフのランプ (2箇所) があり、 裏セリのビットをモニターで瞬時に正面サイドに伝える仕組みになっているなど、 大変機能的なシステムが作り上げられていた。
「リザーブライブビッド」 という、 リザーブ価格を随時変更する方式を採用していたことも初めて知った。 これは、 セリの最中にコンサイナーがリザーブ価格を変更する際、 せり事務所のリザーブブースに駆け込んでリザーブ価格を変更できるシステムだ。 ブースで変更された価格は、 オンラインで結んだ鑑定台のモニター上のリザーブ価格に即座に反映するので、 セリはスムーズに進行していく。
 レポジトリーでの閲覧者のデータ管理も、 バーコード付きの閲覧カードをスキャンすることによって、 きわめて簡便に情報の集積管理がなされていた。
 これらのオンラインシステムは、 セリ運営のあらゆる分野で広く利用されているようだ。 セリの歴史を積み重ねていくなかで、 さまざまに施設や運営上の改善を加えていくなど、 豊富な資金を背景に思い切った設備投資を行っていくキーンランドの経営姿勢がそこにあった。

●クレジット開設と売買確認書
 日本とは異なり、 クレジットを開設する (購買者登録) のは、 結構大変らしい。 よく知られた方々は別として、 預金残高証明書などの提示が求められるのが通例とのこと。 その一方で、一度登録が済めば、セリのたびに登録する手間は不要となる。
 オークションで馬を落札したあとの手続きはいたってシンプルだ。 落札直後に売買確認書類にサインをすればそれでおしまいという単純さは、 日本の手続きとは好対照をなしている。

●キーンランドと日本のセリ
 セリを運営するキーンランド協会は、 大学や獣医師団体などへの寄付や助成も行う公的な団体だが、 馬を1ドルでも高く、 また1頭でも多くオークションで売却するために運営、 施設すべてにおいて最善を尽くしている。
 コンサイナーも当然、 できる限り上場馬を高く売るために血眼になる。 その積み重ねがセリの価格、 売却結果に如実に表れ、 大変驚くような金額がセリの実績として作られていくのである。
 ちなみに、 馬を安く買うための基本は、 競り上げのサインをなるべく小さくして、 コンサイナーや関係者に競り上げの様子を悟らせないようにすることだそうだ。 キーンランドでも、 コンサイナーはできるだけ高く馬を売ろうしているし、 購買者は安く買いたいと思っているわけだが、 この両者のせめぎあいは、 日本でのセリでは考えられないくらいに激しかった。
 本場のセリを見学して実感したのは、 日本のセリはキーンランドと比べると牧歌的ともいえるものだが、 ある意味、 大変良心的で安心して馬を購買できるセリになっているということだ。
 今回の研修では、 セリの全般について大変良い勉強をさせていただいた。 この成果を来年度のセレクトセールの運営に生かしていきたいと思っている。

遠藤 幹

※このコラムは、(社)日本競走馬協会の会報に掲載されている「日高便り」を、協会の許可を得て掲載したものです。