H17.7.20



■暗雲漂う6月の北海道−調教セールも道営も前年割れ

 
競馬の祭典 「日本ダービー」 も終わり、 何やら祭りのあとの静けさといった雰囲気が漂っている。 6月になってどこの種馬場でも種付けに来る生産者の数が少なくなり、 シーズンの終盤を迎えた感がある。 毎朝あった種付予約の電話もめっきり本数が少なくなり、 じきに電話の潰える日がやってくる。 牧場の周りの木々は新緑に包まれ、 遅咲きの八重桜や梅、 ライラックやツツジが一斉に開花して、 馬産地は一番美しい季節を迎えようとしている。
 しかし、 梅雨のない北海道とはいえ、 馬産地を取り巻く状況はジメジメとした梅雨空模様で、 カラリと晴れわたるといった感じではない。
 5月下旬に北海道では3団体が主催するトレーニングセールが相次いで開催され、 今シーズンの市場のスタートを切った。 4月に開催されたJRAの 「ブリーズアップセール」 が素晴らしい成果を挙げたのに対し、 馬産地のトレーニングセールは、 売却率はおおむね前年並みを維持したものの平均価格が大きく落ち込み、 いまひとつ冴えない結果に終わってしまった。 3主催者のセール結果は次のとおり。
 日高軽種馬農協…上場126頭、 落札64頭 (落札率50・8%)、 落札総額=3億2265万4500円、 平均価格=504万1476円、 最高価格=2719万5000円、 最低価格=105万円
 ひだか東農協…上場110頭、 落札55頭 (落札率50・0%)、 落札総額=4億7183万8500円、 平均価格=857万8881円、 最高価格=2835万円、 最低価格=157万5000円
 (株)プレミアセール…上場55頭、 落札23頭 (落札率41・8%)、 落札総額=1億4763万円、 平均価格=641万8696円、 最高価格=2835万円、 最低価格=52万5000円
 セール全体を見れば、 高額取引馬も何頭か出たように質の良い馬は高く落札される一方で、 生産原価に達せずに競り落とされる馬も数多く、 価格帯の二極分化が進んでいる。
 日本の馬取引では幼駒ほど高く売買され、 年齢を経るほどに価格は安くなる傾向にある。 トレーニングセールは、 当歳で販売できるほどの良血ではない馬、 あるいは成長が遅れて当歳売りがかなわなかった馬に育成・調教を施して 「即戦力」 という付加価値をつけて販売するものだが、 そこに上場者にとっての妙味と、 購買者の掘り出し物探しといった思惑が交差し、 市場として成立しているわけだ。
 しかしトレーニングセールの現状は、 上場者にとっては大変酷な 「生産原価にトレーニングという経費をかけて、 生産原価割れでの販売を強いられる」 市場といった側面が大きくなりつつあるようだ。 3つのセールで売却された142頭のうち、 落札価格が300万円未満の馬は47頭。 3頭に1頭が原価割れ (実際の損益分岐点は300万円より相当高いはず) と思われる価格帯での販売だったという事実を重く受け止めたい。
 昨年は好調に推移して2年連続売り上げアップを達成したホッカイドウ競馬も、 本年は一転して苦境に喘いでいる。
 6月2日現在 (開催日数20日間)、 発売金額は25億6013万円あまりにとどまっているが、 この金額は昨年より5億1172万円も少なく、 対前年比83・3%という激減ぶりなのだ。 発売計画対比でも84%となっており、 危機的な数字といわざるを得ない。
 主催者に聞くと、 春先の寒さで2歳馬をはじめ在厩馬の調整が遅れて出走総頭数の減少を招き、 1日あたりの番組数の減少、 1レースあたりの出走頭数の減少となって、 結果として発売額の大幅減少を生じさせてしまったという。
 昨年、 コスモバルクで大いに盛り上がりを見せたホッカイドウ競馬ではあるが、 残念なことにバルクはいまひとつ本調子になく、 決め手となるような強調材料も乏しく、 手詰まり状態に陥っている。
 本年末をもってホッカイドウ競馬の経営改革5カ年が終了する。 高橋知事もすでに明言しているとおり、 5年間の成績を判断して何らかの結論を出すことだろう。 北海道の財政が危機的状況にあるなかで、 競馬だけが特別扱いを受けるとは到底思えない。
 万病に効く特効薬はないのだが、 それでも特効薬を探し求めたい気持ちになってしまうのは私だけではないだろう。

遠藤 幹

※このコラムは、(社)日本競走馬協会の会報に掲載されている「日高便り」を、協会の許可を得て掲載したものです。