H16.5.3





■ホッカイドウ競馬のスター候補生たち

 高知競馬の106連敗馬ハルウララが、全国的な人気を集めている。3月22日に中央競馬の人気騎手武豊を背にレースを走る様子は、大々的に各種メディアにも取り上げられ、地方競馬に久しぶりに明るい話題を提供した。
 この業界は優勝劣敗の原理原則で動いており、私自身は、当初なぜこれほどまでに弱い馬が脚光を浴びるのか、よく理解できなかったのだが、実際にレースを見て、また関連ニュースに触れてみて、ハルウララが一生懸命レースを走り、そしてあえなく負けてしまう様が、みんなに素直に感動を与えているということに今更ながら気付いた次第だ。メディアの力と、ネーミングの良さは確かにあるが、けなげに走るハルウララには本当に頭が下がる。

 私の地元ホッカイドウ競馬にも、今の人気はハルウララには及ばないものの、将来道営出身のスターとなるべき逸材がいる。コスモバルクだ。昨年夏に旭川でデビューしたコスモバルクは、ホッカイドウ競馬で4戦2勝の成績を残し、道営・田部厩舎に在籍したまま、中央のレースに果敢に挑戦した。暮れのラジオたんぱ杯2歳S(G3)を快勝し、3月の弥生賞(G2)では、メイショウボーラー以下を一蹴し、一躍皐月賞の本命候補に躍り出た。中央では、3戦全勝の負けなしである。
この馬は、ホッカイドウ競馬が他の主催者に先駆けて始めた外厩制認定馬第一号でもあり、父ザグレブは愛ダービー馬の実績を持ちながら、これまでさして優秀な産駒を送り出せず、アイルランドに輸出されてしまっており、その残された産駒の中からこの馬が登場したことにも、なにやら血の不思議を感じさせ、様々な意味で、次なる地方競馬出身のスターになり得る素材だと思う。この拙文が出るころには、皐月賞の結果も出ているとは思うが、おそらくは、勝ち負けを争う成績を収めているに違いない。
 
もう一頭、北海道ローカルで、急激に名前を売り始めた馬がいる。「ゼントヨーヨーズ」と名付けられたアブクマポーロを父に持つ2歳牝馬がそれだ。現在、地元テレビ局のバラエティ番組の主役として、名付けから、厩舎入厩、そして調教と、実馬の成長と歩様を合わせるように番組が進行している。
この馬は、地元門別町の高沢牧場の生産馬。馬主も高沢さんであり、また番組に登場するタレントが、北海道ローカルでは大変人気のあるタレントの大泉洋さんということで、馬産地限定かもしれないが、この番組は結構視聴率を稼いでいるらしい。高沢さんは、ブリーダーズスタリオンの種付に立ち会っていただいている共済組合の獣医さんなのだが、来場する生産者は、みな口々にが、「先生の馬テレビで見てるぞ。」と挨拶代わりに声掛けすることが大変多いのだ。
 この企画、もともとは、昨年夏の台風による災害で大変な被害を受けた日高・門別町を励まし、勇気付けようとした企画でもあり、町長や、地元商工会の皆さんも登場し、なかなか地元民には面白い番組になっている。
 3月18日に行われた2歳馬の能検では、ゼントヨーヨーズは、枠入りを5分間も嫌がるという名(迷?)演技を披露し、格好の番組ネタを提供したのだが、レースでは見事一着で入線し、なかなかの実力と好仕上がりぶりを示した。このゼントヨーヨーズの能検の日は、来場者の混乱を避けるため比較的抑え目の宣伝だったにもかかわらず、600人を超える人が来場した。普段の門別競馬場開催の入場者が350人程度だから、その人気の過熱振りがうかがえるだろう。
 正直なところ、その能力が未知数のゼントヨーヨーズだが、その実力が伴えば、人気沸騰は間違いのないところだ。いやいや、負け続けても、きっとファンは熱い声援を送ってくれるに違いない。
 ホッカイドウ競馬に限らず、各地の地方競馬は、大変厳しい経営を強いられている。地方競馬全体の活性化のためにも、ファンに競馬の楽しさを広く伝えられるスターホースの出現が待たれる。ハルウララ、コスモバルク、ゼントヨーヨーズたちに託された夢が大きく広がってほしいと思う。ハイセイコー、オグリキャップに続く、第三の大スターホースの出現が、地方競馬を主催する皆さんの切実な願いでもあるだろうし、私の夢でもあるのだ。

遠藤 幹

※このコラムは、(社)日本競走馬協会の会報に掲載されている「日高便り」を、協会の許可を得て掲載したものです。