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■偉大なるサンデーサイレンス

 5月25日、東京競馬場で行われた第64回優駿牝馬(オークス)は、サンデーサイレンス産駒のスティルインラブが、同じサンデーサイレンス産駒のチューニーを、残り1ハロンで並ぶ間もなく交わし優勝した。スティルインラブは、桜花賞、オークスの牝馬二冠を制し、同世代の牝馬の頂点に立った。
 翌週6月1日の第70回東京優駿(日本ダービー)では、前走の皐月賞でたぐい希な闘争心を披露し優勝したサンデーサイレンス産駒のネオユニヴァースが、同じ父を持つゼンノロブロイの追撃を押さえて完勝し、二冠を達成した。陽気なイタリア人ミルコ・デムーロ騎手の好騎乗が2戦とも印象深い。
 3歳春のクラシック競走は、サンデーサイレンス産駒2頭が4戦全て制し、牡馬、牝馬ともに二冠馬が誕生したこととなる。ネオユニヴァース、スティルインラブともに、同世代馬との比較では絶対能力に勝り、両馬ともこのまま無事にレースを重ねれば、父サンデーの最優良産駒になる可能性が大変高いように思う。それほど2頭ともレースでは際だった強さを見せていた。
 サンデーサイレンスの今春の活躍は、これだけにとどまらない。G1戦に限ってみても、フェブラリーSではゴールドアリュールが圧勝劇を演じ、スプリンターズSでは、ビリーブが優勝し、平地のG1では8戦6勝という群を抜く成績だ。勝てなかった天皇賞(春)とNHKマイルでは、ただ単にサンデー産駒の出走がなかったということでもあり、出走したレースは6戦全勝である。この春、サンデーの強さが例年以上に際だっていたように思う。
 今年も7月の7日、8日の両日にわたって開催されるセレクトセールには、サンデーのラストクロップが24頭(牡馬19,牝馬5)上場される予定だ。今年、重賞戦線で圧倒的な強さを見せつけているサンデーサイレンスの忘れ形見をめぐり、相当熾烈な争奪ゲームが繰り広げられることとなるだろうし、恐らく上場馬のうち何頭かは、3歳クラシック戦に駒を進め、ターフの話題を独占することになるかもしれない。
 昨年この時期には、サンデーサイレンスは既に病魔に冒され、種付けを休止しており、容態は徐々に悪化の方向をたどって8月19日に永眠した。しかし、この産駒の大活躍を見ていると、サンデーの死が未だに信じられない気持ちになってくる。こう書いていると、どうしても早すぎたサンデーサイレンスの死に思いが至ってしまうのだが、次代を狙った馬が少しずつ頭角を現してもいる。
 サンデー系種牡馬の今年の種付け状況を見ても、ポストサンデーの呼び声高いダンスインザダークが多頭数交配をこなし、ついで実績馬ではフジキセキが人気を集めているようだ。今後は、スペシャルウイーク、アドマイヤベガ、アグネスタキオン、ステイゴールドなどの有力後継が、続々と種牡馬デビューを果たし、父を超えろとばかりに種牡馬成績で互いにしのぎを削ることとなるだろう。
 一方、ポストサンデーを狙う、非サンデー系の種牡馬陣も多士済々だ。今年の3歳クラシックを例に取れば、2着、3着には、サクラバクシンオー、ミシエロ、サクラローレルといった面々を父に持つ産駒が入線した。また、NHKマイル勝ち馬のウインクリューガーの父タイキシャトルは、ファーストクロップがまだ3歳という若き種牡馬で、無限の可能性を秘めている。これから産駒をターフに送り出す種牡馬の中からも、次世代のホープがきっと登場することと思う。
 競馬も、3歳クラシックを一つの頂点とした体系の中で年月を重ねていく。その中で種牡馬界においては、新たな血脈の台頭がある一方で、盛りを過ぎ徐々に衰退する血脈もある。その栄枯盛衰の中で時代は流れ、競馬の面白さや、感動、悲しみも移ろい変わってゆく。
 現実にはこれから3世代、サンデー産駒がターフデビューを果たし、おそらくはチャンピオン級の競走馬もこれからも何頭も出現することだろう。その一方で、新種牡馬産駒が忽然と活躍したり、新たな有力種牡馬が各地に導入されたりなど、少しずつポストサンデーの色彩も徐々にではあるが、強くなってくることと思う。
 次代のリーディングサイアーは、サンデー直仔か、はたまた新興勢力か。今から興味は尽きないが、その一方で、二冠を制したネオユニヴァースに、サンデーサイレンスの最有力後継の可能性を感じたのは私だけだろうか。

遠藤 幹

※このコラムは、(社)日本競走馬協会の会報に掲載されている「日高便り」を、協会の許可を得て掲載したものです。