H15.1.14





■新種牡馬動向(ポスト・サンデーサイレンスを考える)

 巨星墜ちる!8月19日、日本競馬史上に燦然と輝く一時代を築いた大種牡馬サンデーサイレンスが、若くしてこの世を去った。
 気の早い一部の競馬マスコミは、ポスト・サンデーを占うなどと称して、雑誌に特集記事を組んだりするなど、未来のリーディングサイヤーを探し出そうとしているが、正直なところ馬産地では、サンデーを失った大きな喪失感は、サンデーでしか埋められないといったムードの方が強い。タイキシャトルが、新種牡馬として2歳戦で好スタートを切ったとはいえ、実際のところ、サンデーサイレンスの遺児たちが、あと2、3年は今まで同様の圧倒的な強さをもってターフを席捲するのだろう。
 それでも馬産は動いていく。各地で、新種牡馬の導入話がまとまり、今年のおおよそのラインナップが見えつつある。急ぎ、それらを俯瞰してみたい。

 最大手の社台グループでは、9月に入り、早速ウォーエンブレムの導入を決定した。ウォーエンブレムは、今年のケンタッキーダービー、プリークネスSを連勝した米国3歳トップホースだ。馬代金も1700万ドルと、破格の値段であり、関係者の意気込みがひしひしと伝わってくる。おりしもサンデーサイレンスの解散総会開催時刻に千歳空港に到着したとの連絡があり、何かしら既にポスト・サンデーの因縁めいたものも感じられる。来年のお披露目が今から楽しみである。
 社台スタリオンには、ブライアンズタイムの有力後継馬であるタニノギムレットも入った。今年の3歳最強馬も屈腱炎には勝てなかったが、自身の果たせなかったJCや古馬G1制覇の夢は、産駒に託すこととなる。バランスの取れた馬体、レースで見せた抜群の切れ味が、どのように産駒に伝わるのか興味深い。
 凱旋門賞では、故障もあって不本意な結果に終わったが、マンハッタンカフェには、父サンデーサイレンスの最優良後継種牡馬へ名乗りを挙げるチャンスは十二分にある。菊、有馬、春天と、中長距離で抜群の強さを示した現役時の活躍は今でも印象深い。
 年明け早々には、一昨年の年度代表馬で、早世したトニービンの代表産駒ジャングルポケットと、菊花賞を制した古豪ナリタトップロードの両馬の引退、種牡馬入りも決まった。これら内国産馬の引退はファンとしては寂しい限りだが、今後は二世の活躍に期待したい。
 他にも、エンドスウィープの代表産駒のスウェプトオーヴァボードや、マイルの王者アドマイヤコジーンが種牡馬入りし、今夏3頭の種牡馬を失った社台スタリオンは、新たに7頭の新顔が加わり、多士済々の顔ぶれとなった。大きく巻き返してくることは間違いない。
 日本軽種馬協会は、99年のケンタッキーダービーとプリークネスSを制したカリズマティックと、チャンピオンスプリンターのスクワートルスクワートという、共に大変魅力に富んだ種牡馬2頭を導入した。民間が、海外からの種牡馬導入に対して、資金的な面でやや躊躇する感もある中、このクラスの馬を導入できるのはうらやましい限りではある。
 浦河のイーストスタッドには、サドラーズウェルズ産駒のキングオブキングスが、1年リースで供用される。英2000ギニーを制したスピードが武器の種牡馬。既に海外での産駒成績も出ており、種付けする側としては安心感がある。もう1頭は、今年の凱旋門優勝馬マリエンバード。父は日本でも実績のあるカーリアン、硬い馬場を得意とし、今年はG1レースを3連勝して本格化したステイヤーだ。こちらは、浦河地区を中心に、シンジケートされた。
 静内地区では、サザンヘイローデザートストーリーの2頭がスタッドインする。サザンヘイローは、南半球のサンデーサイレンスとも言うべき存在で、アルゼンチンで6度もチャンピオンサイアーとなった名種牡馬。デザートストーリーは、通常シンジケートより口数を増やし100口とした「パートナーシップ方式」を導入し、シンジケートが結成しにくい昨今、この新種の投資とも言える方式が関心を呼ぶか、興味深い。
 門別のブリーダーズスタリオンには、2000年の皐月賞、菊花賞を制したサンデーサイレンス産駒のエアシャカールがスタッドインする。ダービーは2着に惜敗したものの、その優れた勝負根性は、きっと産駒に伝わってくるものと思う。シンジケート株も即日完売で、関係者の期待も大きい。また、同じサンデー系だが、未完の大器ニホンピロニールも既に入厩しており、脚部不安もあり、重賞制覇には至らなかったが、なかなかの好馬体の持ち主で、こちらも楽しみ。
 一方、フジキセキの後継として、ダイタクリーヴァもブリーダーズスタリオンに入厩する。G1制覇には、あと一歩だったものの、中距離で安定した成績を残した本馬への期待も大きい。世界を股にかけて優駿を送り続けるデインヒル産駒エアスマップも、日高軽種馬農協門別に種牡馬入りが決定した。マンハッタンカフェの半兄にあたる。

駆け足で、各地にスタッドインした新種牡馬を見て回ったが、当然ながら彼らは、サンデーサイレンスの産駒が全く存在しない世代同士で競争することとなる。果たして、この世代から、次代を担う馬が現れるかどうか、今から大変興味深い。サンデーサイレンスが死去した後、何かと暗い話題の多かった生産界ではあったが、こと新種牡馬に関しては、100パーセント未来志向の話であるし、私自身、種牡馬事務局の仕事をする者として、新たにスタッドインする種牡馬と対面することは、いつもわくわくする。
当然、種牡馬入りした馬も、その後厳しい生存競争が待ち受けているし、私も、1頭でも多く種付けの申し込みをとるべく、営業しなければならないが、それでも、私自身、前向きな仕事が出来ることを、心底楽しいことだと思う。
2003年は、馬産界にとって良い年でありますように。

遠藤 幹

※このコラムは、(社)日本競走馬協会の会報に掲載されている「日高便り」を、協会の許可を得て掲載したものです。