H14.5.28





■種牡馬の配合を見て考える

 間もなく6月になるが、相変わらず各地の種馬場は、毎日の種付け業務で忙しい日々が続く。100頭を超える多頭数交配がごく当たり前となった現在、1日朝、昼、夕方の3回種付け以外に、早朝、夜間にも種付け業務を行うことも珍しくなくなってきている。
 ブリーダーズスタリオンでも、今年は人気種牡馬ステイゴールドとタイキブリザードが入厩したこともあり、例年にないほどのハイペースで種付け業務が進んでいる。
5月27日現在、ステイゴールドが149頭、タイキブリザードが118頭もの繁殖牝馬との交配を終了した。このペースで種付けをすると、最終的には、各々170頭、130頭を超える種付け数になるだろう。
 これら人気種牡馬がたくさんの繁殖牝馬を集める一方で、種付け数を大幅に減らす種牡馬も各地域で続出しそうだ。今年の種付権利の取引状況を眺めると、特定種牡馬への人気の集中が例年以上に顕著なようだが、その一方で、これほど実績のある種牡馬が、何故全くの不人気になってしまったのかと、こちらが疑問に思うくらいの人気凋落馬もいる。
 大多数の生産者が、配合種牡馬を選ぶ際に重視しているのは、現在産駒が活躍していることと、配合条件が受胎・出産条件であること、それにフリーリターン付きであることのの3点であると言い切っても間違いではないだろう。とにかく、産駒が売りやすいことと、種付料の支払の遅いことが、種牡馬を選択する最重要項目であるのが、現在の馬産地の現状である。
 ちょっと考えるとわかることだが、種牡馬所有者の立場から言えば、今産駒が走っていることは、すなわち種付料を高く設定する最高の機会であるし、種付料の支払が遅くとも良いということは、集金が遅くなる分、また不受胎時のロスを減らす分、種付料を逆に高く設定することに他ならない。しかし、そんなことに構っていられない状況が、馬産地の深刻さを如実に物語っているのだ。
 一方、この困難な時代の中で、着実に小さな成功を収めている牧場もある。
Aさんは2年前に、当時大幅に種付料が下落していたホワイトマズルの種付権利を4株まとめて購入し、自分の繁殖牝馬と交配した。ホワイトマズル産駒を多数見て、その良さを見抜いた上で、種付料が下がったのをチャンスとばかりに勝負に出たのだ。その後、スマイルトゥモロー、プリンシパルリバーなどの活躍馬を続々送り出したホワイトマズルは、今年は余勢種付権利が早々と満口になる人気種牡馬に変身した。Aさんは、今年1歳になる生産馬を、これからじっくり仕上げて市場で販売する計画だという。
 Bさんは、毎年種牡馬成績をじっくりと見極め、分析した上で、1月早々には配合種牡馬の株を購入する。年明け早々では、まだ本格的に種付権利は取り引きされていないため、おおむね最盛期より1,2割は安く購入することができるし、人気の受胎条件株もまだ満口になっていないことが多い。結果的にBさんは、ほとんど人気のトレンドを読み誤ることなく、割安に種付権利を毎年調達しているのだが、この毎年の積み重ねは長期間で見た場合、牧場の収益では何千万円の開きとなって現れてくることだろう。
 2人に共通するのは、研究熱心であることと、他者に流されない独自の信念があるということだ。こんな時代だからこそ、個人の才覚が大変重要になる。種付権利の調達一つに関しても、既に牧場の経営手腕が問われていることを強く感じる。
遠藤 幹

※このコラムは、(社)日本競走馬協会の会報に掲載されている「日高便り」を、協会の許可を得て掲載したものです。